小社は5月26日から29日にかけて、「夏期講習」について、小中学生の保護者500名を対象に、インターネット調査を行いました。
まず、現在の通塾率を聞く「お子様を学習塾に通わせていますか?」の質問への回答結果を見てみましょう。
最も通塾率が高いのは中学3年生の53.4%で、次いで中学2年生の38.3%、小学校高学年の30.8%でした。逆に、中学1年生で22.6%という数字はかなり低いと言えるのではないでしょうか。
「この夏、お子様を学習塾の夏期講習に通わせたいと思っていますか」の質問では、中学3年生の60.3%が最高で、次に小学6年生の45.5%、次いで、小学5年生の31.5%、中学1年生の29%という結果でした。現在の通塾率の低い中学1年生でも夏期講習への参加以降は若干高まるようです。
2つのデータを合わせてみてみると、中学生では中学3年生と中学1年生で現在の通塾率よりも夏期講習への参加意向が高く、逆に中学2年生では現在の通塾率よりも夏期講習への参加意向が低くなっているのが分かります。
高校受験を控えた中学3年生については当然の数字と言えるでしょう。
中学2年生に関しては、今のうちの夏休みは通塾以外のことをさせたいという保護者の意図が表れているようです。
では、中学1年生についてはなぜ現在の通塾率よりも夏期講習への参加意欲が高くなっているのでしょうか。
通塾率の高くない、つまり、塾業界としてはまだ十分に取り込めていない中学1年生に注目をして、さらに保護者のニーズを分析してみましょう。
現在の通塾率が高くはないものの、夏期講習には興味があるというデータからは何が読み取れるでしょうか。
小学生から中学生になったことで、勉強のスタイルが変わります。英語という新しい教科も加わります。
とりあえず中学生になっておよそ1カ月半がたったものの、中学生としての学習方法が身に付いているかどうか不安な保護者が多いのではないでしょうか。
次に「夏期講習の予算として、いくらくらいをお考えですか」の質問結果を見てみましょう。中学1年生では「3万以下」と考える家庭が9割近くあります。
受験が差し迫っているというような直接的な動機がないため、お財布のひももやや堅いようです。
さて、「3万円以内で、学校の勉強についていけるかどうか不安を解消したい」と思っている保護者にどんな商品が提供できるでしょうか。
高校受験などはまだ意識せず、純粋に1学期の復習や、2学期の予習などを行うライトプランタイプの夏期講習というのもありではないかと思います。
それだけでは面白くないので、ちょっと古いデータですが、2009年9月にBenesse教育研究開発センターが行った「小学生の夏休み調査」の結果を引っ張り出してみましょう。
■Benesse教育研究開発センター「小学生の夏休み調査 -小学生の保護者を対象として-
http://benesse.jp/berd/center/open/report/natsuyasumi/2009/syo/index.html
それによると、「保護者は日常とは異なる経験をすることや、家族と離れる経験をすることが、子どもの成長につながっていると感じるようだ」との傾向が示されています。
夏休みいろいろな体験をした子どもの親は「子どもが夏休みを楽しんでいた」と感じやすいというデータもあります。
ただし、たくさんの経験をさせようとすればするほどお金がかかるのは当たり前。
●夏休みにかかるレジャー・旅行費用(世帯の平均総額)
夏期講習にも行かせて、サマーキャンプにも行かせるというのは、経済的には厳しい状況。親としては「夏期講習をとるか、夏休みしかできない経験をとるか」の選択を迫られていると考えられます。
調査結果の母親のコメントの中には「外泊イベントが増えると、勉強が遅れないか心配」という母親のコメントもあります。
そこで、上記のライトプラン的な夏期講習とサマーキャンプを合わせて、屋外遊びと勉強を組み合わせた短期の合宿などを考案しても面白いのではないかと思います。朝起きて勉強をして、日中は思い切り遊び、食後にまた勉強というような合宿です。通常のしっかり勉強する夏期講習や勉強合宿とは学習内容や目的を明確に差別化し、普段通塾していない子どもたちこそをターゲットにするのです。
「親の休みが取れず、旅行などに連れて行ってやれない」という主旨コメントもありますから、いっそのこと上記約8万円のレジャー費の一部もこちらに組み込んでもらうのです。
「宿題で分からない箇所が出てきても、教え方に困った…理解してくれないとなおさらどうしてよいのかわからなかった」という母親のコメントもありました。「夏休みにしかできないような貴重な体験をさせてあげられて、塾の先生が1学期の復習をしてくれる。2学期の予習をしてくれる。夏休みの宿題を見てくれる」となれば、親にとっては大変魅力的に感じられるのではないでしょうか。
特に、夏休みが始まったばかりの7月後半は夏休みに生活が乱れないようにするために重要な時期。
また、2学期が始まる直前の8月20日以降は、夏休みモードを学校モードに切り替えるために重要な時期です。
お盆は家族で帰省などを楽しんでもらい、その前後、夏休みの最初と最後に、「外遊び&お勉強」の「ハイブリッド合宿」を実施してみるというアイディアです。
しかも、同じ釜のメシを食った仲間はいやがおうにも結束が強まります。本科コースへの接続の可能性も高いのではないかと思います。中学1年生からの早期顧客囲い込みを狙った夏の集客イベントの一案として企画されてみてはいかがでしょうか。
実際、JTBやキッザニアは「旅いく」として、子どもに自然体験や仕事体験ができるさまざまなプログラムの提供をはじめています。
すでに、夏期講習の募集準備は終わられている頃かと思いますが、夏期講習とは別に学習塾ならではの「考えること」をうまく組み込んだ「サマースクール」や「サマーキャンプ」として、夏休み期間中の新たなサービスが提供できるかもしれませんね。
山田 未知之