中央教育審議会で検討されていた次期学習指導要領の内容がほぼ決まった。
(1)主要教科の授業時数を小学校で約10%、中学校で約12%増加
(2)逆に、小中学校の「総合的な学習の時間」と中学校の選択教科の授業時数を削減
(3)これに伴い、現行指導要領で割愛された主要教科の指導内容の一部を復活
(4)小学校5年から英語を導入
(5)道徳教育、体験活動を重視
特徴はこんなところか。順調に作業が進めば2011年度から実施されることになる。
現行の指導要領ほど毀誉褒貶の甚だしかったものは珍しい。
告示以前の90年代の半ば、いまだ検討段階だったこの指導要領に捧げられた賛辞を覚えているヒトは少なくないだろう。「生きる力」「ゆとり教育」という言葉の持つイメージがなせるワザなのか、教育界、学界、ジャーナリズム、世論、すべてが諸手をあげて賛成したといっても過言ではない。
が、それも束の間。直ちに激しい学力低下論が沸き起こる。
余談になるが、もっとも早い時期からその学力低下論をリードしたのは、京大の西村教授や精神科医の和田氏と並んで、中学受験の日能研や英進館の筒井氏であった。
学習塾業界がわが国の教育政策にこれだけの影響を及ぼしたのは初めてであり、身びいきではなく、大きく評価されてよかろう。
中教審教育課程部会の「審議のまとめ」には、現行の指導要領について、以下のような反省点が記載されることになるという(産経ニュース/10月31日)。
(1)「生きる力」について文部科学省と学校関係者、保護者、社会の間に十分な共通理解がなかった。
(2)子供の自主性を尊重するあまり、指導を躊躇する教師が増えた。
(3)総合学習は、各学校で十分理解されていなかった。
(4)必修教科の授業数が減少した。
(5)家庭や地域の教育力の低下への対応が十分でなかった。
ほぼ10年ごとに改訂される学習指導要領は、10年間のわが国の教育を規定するだけではなく、その間に学校教育を受けた数千万の国民の人生を規定する。新しい指導要領がこの反省点を踏まえた、少しでも実のある教育を推進する先導役になることを期待したい。
Written by PSC