※取材塾は匿名としてあります。また、各項目の内容は複数の塾の情報を合体してあります。
A塾には中高年のベテラン指導員が多かったが、塾長が強引に世代交代したため、ベテランのほとんどがいつの間にか消えてしまった。生前の塾長と親しかったX氏はその辺りの裏事情を語る。
「ずっと持病があってね、本当は息子に継がせたくなかったらしいが・・・理系の大学出たけど品格に疑問があってねえ、若手の番頭格のQ君に譲るつもりだった・・・しかし、息子が戻ってきて『俺がやりたい』って。会社勤めが嫌になって『とりあえず塾でも』って気持ちだったようだ・・・心あるスタッフは、俄かに据えられた『塾長』にまさに唖然だよ」
父の背中を見て育ったのに、新塾長は「塾のじの字も知らない」男だった。塾の運営も指導の方針も全て幹部任せ、現場任せなのに、自分の指示を出してそれがすぐに実行されないと烈火の如く怒った。
「もう子供っぽい大人・・・ピーターパンみたいなもんだわ。だだっ子みたいに、立派な大人たちを自分に従わせる・・・こりゃあ、どうしたって我慢の限界を超えた人から順番に辞めていくわな」
そして・・・誰もいなくなる日は近い。
どうして新塾長はそんなに焦って塾を継ごうとしたのか? 「自分の都合だよ」とX氏は苦笑いを浮かべて暴露する。
「贅沢な奥さんもらっちゃってさ、新入社員の分際で豪華なマンションをローンで購入したわけさ。その時に奥さんの実家からかなりの金額を生前贈与でもらって頭金にしていたからねえ・・・わかるだろう? 奥さんに頭が上がらなくなってて、それで会社辞めて『生活改善』しようと思ったらしい」
しかし世の中そう甘くはない。父親の病気をいいことに、世代交代をしたまではよかったが、有能な社員から続々と辞めていき、そのたびに優秀な生徒も退塾していった・・・。
「塾のためじゃなくて、生徒のためを考えたら、そして塾を支えてきた社員のためを思うなら・・・駄目な息子には継承しないほうがいいよ」